フィリピンの首都マニラがここ約10年で最も深刻な水不足に見舞われている。インフラ整備の遅れや需要増加に加え、ダムの貯水量が減少したことなどが原因。
複合企業アヤラ傘下の公益会社でマニラの東半分の地域を管轄するマニラ・ウォーターは今回の水不足の責任を認めている。ここ数日で状況は緩和されたが、官民挙げて即時かつ長期的な解決策をなお模索している。
水不足の原因
マニラ・ウォーターの管轄地域で断水は3月上旬に数十の村から始まり、先週には都市部全域に拡大。水が供給されない状態が何日も続いた地区もあり、不足分は1日当たり1億4000万リットルに上った。
今月のように、ラメサダムの水位が69メートル以下になると、マニラ・ウォーターの処理施設には水が流れなくなる。
ラグナ湖から毎日1億リットルの水を供給するために建設された同社のカルドナ処理施設は昨年12月に操業開始の予定だったが、3月15日時点で稼働しているのは一部にすぎない。
マニラ首都圏上下水道供給公社と認可を受けた企業はインフラを拡張するとともに、新たな水源の確保もしておくべきだった。
市民や企業への影響
先週の断水時には、バケツなどを持った数千人の市民が給水ポンプや消火栓の前に列を成し、消防車を追いかける人もいた。小売店ではプラスチック容器が売り切れ、一部のレストランは飲み物の提供を中止。
公立病院は重病患者以外受け入れを取りやめたほか、ショッピングモールのトイレは一部閉鎖となり、マカティにあるザ・ペニンシュラマニラ・ホテルは噴水を停止した。
当局による対策
ドュテルテ大統領は15日、アンガットダムから150日分に相当する約6000億リットルの水を直ちに放出し供給を増やすよう指示したが、インフラの不備で1日に40億リットル以上を引き込むことはできなかった。水道当局は古井戸の再開も推進している。
過去の水不足
エルニーニョがフィリピンを襲った2010年にも、マニラ市民は1日当たり数時間の断水に見舞われた。当時、政府は定期的に人工降雨作業を実施したほか、給水車を出動させて各家庭に水を配布した。
水不足解消はいつ?
マニラ・ウォーターによれば、影響を受けた顧客のうち90%への供給が18日までに復旧。フェルディナンド・デラクルス社長は同日の議会調査で、5月末までに水道サービスは完全に復旧すると説明した。同社長は今回の事態の責任を取って辞任する用意があると表明している。